Diary ~あなたに会いたい~
「このお花の名前を知っている男性って、
めずらしい気がして」
にこり、と、小首を傾げて僕の目を覗き込む。
その仕草にまた、どきりと胸を鳴らしながら、
僕は一瞬、答えに迷った。そうして、
-----小さな嘘をついた。
「花は、好きです。そんなに沢山、知って
いるわけじゃないですけど」
僕はぎこちなく笑んだ。
“あなたの為に、この花の名を覚えました”
という本心は、胸の奥にしまい込んでおく。
「そうなんですね。白のトルコキキョウに
は素敵な花言葉があって、結婚式のブーケに
もよく使われるんです。1本の茎にいくつも
大きな花を咲かせてくれるから、仏様のお供
えにも華やかでいいですよ」
白い花を僕の手にのせ、目を細める。
彼女の深く澄んだ瞳に、また、鼓動がひとつ
鳴って、
------僕は2度目の恋に落ちた。
「花言葉か。それは、知らないな」
つい、と視線を花に移す。けれどすぐにまた
顔を上げると、僕は彼女に言った。
「明日、また来ます」
その言葉に、目の前の瞳が大きく開かれる。
何かを言おうとして、彼女の唇が薄く開いた。
「明日も、来ます」
彼女の瞳の奥に揺れる自分を意識して、もう
一度繰り返す。
-------今日は、あなたに会いに来ました。
-------明日も、あなたに会いにきます。
言葉にできない想いが、胸を焦がして苦しい。
僕は彼女の返事を待たずに頭を下げると、
くるりと背を向けて店を後にした。
めずらしい気がして」
にこり、と、小首を傾げて僕の目を覗き込む。
その仕草にまた、どきりと胸を鳴らしながら、
僕は一瞬、答えに迷った。そうして、
-----小さな嘘をついた。
「花は、好きです。そんなに沢山、知って
いるわけじゃないですけど」
僕はぎこちなく笑んだ。
“あなたの為に、この花の名を覚えました”
という本心は、胸の奥にしまい込んでおく。
「そうなんですね。白のトルコキキョウに
は素敵な花言葉があって、結婚式のブーケに
もよく使われるんです。1本の茎にいくつも
大きな花を咲かせてくれるから、仏様のお供
えにも華やかでいいですよ」
白い花を僕の手にのせ、目を細める。
彼女の深く澄んだ瞳に、また、鼓動がひとつ
鳴って、
------僕は2度目の恋に落ちた。
「花言葉か。それは、知らないな」
つい、と視線を花に移す。けれどすぐにまた
顔を上げると、僕は彼女に言った。
「明日、また来ます」
その言葉に、目の前の瞳が大きく開かれる。
何かを言おうとして、彼女の唇が薄く開いた。
「明日も、来ます」
彼女の瞳の奥に揺れる自分を意識して、もう
一度繰り返す。
-------今日は、あなたに会いに来ました。
-------明日も、あなたに会いにきます。
言葉にできない想いが、胸を焦がして苦しい。
僕は彼女の返事を待たずに頭を下げると、
くるりと背を向けて店を後にした。