Diary ~あなたに会いたい~
コツコツとサンダルの音をさせて、俺の背後を
通り過ぎる。俺はグラスを傾けながら、さりげな
く彼女の横顔を覗いた。
すっと形の良い顎のラインと、長いまつ毛が
儚げな印象を与える------美人だ。
レジに向かう彼女と並行するように、カウンタ
ーの向こうのマスターもレジへ向かった。
-----ピッピッ。
レジの機械音を意識しながら、また、グラスに
口をつけた時だった。二人から、何やらヒソヒソ
声が聞こえた。
「ごめんなさい。ちょっと足りないみたい」
「そう?なら次でいいよ」
財布を閉じ、申し訳なさそうに彼女が肩を
竦める。どうやら持ち合わせが足りないらしい。
そうと知った俺は、迷わず席を立った。
「これで」
適当な金額を財布から抜き取り、彼女の背後
から差し出す。突然、後ろから伸ばされた腕に
驚いた彼女が、振り返って俺を見上げた。
「でも……」
「いいよ。俺が出すから」
表情を止めたまま、じっと俺を見上げている
彼女とは視線を交わさずに、マスターに頷く。
ふぅ、と、肩を竦めながら「本当に?」と、
念を押すマスターに、俺は「構わないよ」と
笑んだ。
「助かったわ。ごちそうさま」
支払を終えて財布をしまう俺に、彼女が
言った。想像していたよりも、落ち着いた
声だった。俺は、「気にしないで」と首を
振った後、でも、と言葉を続ける。
「良かったら、一杯付き合ってくれないか
な?いま、飲み始めたばかりなんだ」
彼女の顔を覗き込む。
すると、彼女は艶やかな笑みを浮かべ、
「いいわよ」と頷いた。
俺は少し先の“甘美な時間”を想像しながら、
笑みを深めたのだった。
「奥の席借りるよ」
グラスを手にマスターに声をかけると、
マスターは頷きながら彼女に視線を移した。
「何か作ろうか?」
「じゃあ、いつものお願い」
「了解」
二人の間で短いやり取りがされる。
やはり彼女はこの店の常連なのだ。
俺は確信した。
通り過ぎる。俺はグラスを傾けながら、さりげな
く彼女の横顔を覗いた。
すっと形の良い顎のラインと、長いまつ毛が
儚げな印象を与える------美人だ。
レジに向かう彼女と並行するように、カウンタ
ーの向こうのマスターもレジへ向かった。
-----ピッピッ。
レジの機械音を意識しながら、また、グラスに
口をつけた時だった。二人から、何やらヒソヒソ
声が聞こえた。
「ごめんなさい。ちょっと足りないみたい」
「そう?なら次でいいよ」
財布を閉じ、申し訳なさそうに彼女が肩を
竦める。どうやら持ち合わせが足りないらしい。
そうと知った俺は、迷わず席を立った。
「これで」
適当な金額を財布から抜き取り、彼女の背後
から差し出す。突然、後ろから伸ばされた腕に
驚いた彼女が、振り返って俺を見上げた。
「でも……」
「いいよ。俺が出すから」
表情を止めたまま、じっと俺を見上げている
彼女とは視線を交わさずに、マスターに頷く。
ふぅ、と、肩を竦めながら「本当に?」と、
念を押すマスターに、俺は「構わないよ」と
笑んだ。
「助かったわ。ごちそうさま」
支払を終えて財布をしまう俺に、彼女が
言った。想像していたよりも、落ち着いた
声だった。俺は、「気にしないで」と首を
振った後、でも、と言葉を続ける。
「良かったら、一杯付き合ってくれないか
な?いま、飲み始めたばかりなんだ」
彼女の顔を覗き込む。
すると、彼女は艶やかな笑みを浮かべ、
「いいわよ」と頷いた。
俺は少し先の“甘美な時間”を想像しながら、
笑みを深めたのだった。
「奥の席借りるよ」
グラスを手にマスターに声をかけると、
マスターは頷きながら彼女に視線を移した。
「何か作ろうか?」
「じゃあ、いつものお願い」
「了解」
二人の間で短いやり取りがされる。
やはり彼女はこの店の常連なのだ。
俺は確信した。