Diary ~あなたに会いたい~
俺は瞬きすら、出来なかった。
絡み合う視線を逸らしてしまえば、逃げられ
てしまう。そう直感する。
互いが固まったまま、数秒の沈黙が流れた。
けれどドアの隙間から入り込んだ風が、彼女
の髪を揺らした瞬間、俺は手にしていたグラス
を置いて立ち上がった。
はっ、と、ゆづるが身を翻す。
俺はドアの向こうに消えた彼女の背中を、
追いかけた。
まさかこんな風に、逃げられるとは思って
いなかった。だから、奥の席に身を隠すこと
なく、ずっとカウンター席に座っていたのだ。
重い扉を開けて、階段を掛け上がる。
手を伸ばしてガシリと細い腕を掴むと、
バランスを崩した彼女が声を上げて腕の中
に倒れ込んできた。
「きゃ……っ!!」
軽い衝撃と共に、彼女の頭が鎖骨にあたる。
鈍い痛みに顔をしかめながら、それでも俺
は腕に力を込めて抱きしめた。
「会いたかった」
苦しげに吐き出した言葉が、暗く狭い空間
に消える。彼女の肩が小さく震えたのを確か
めて、俺は擦れた声で続けた。
「でも、逃げるほど嫌われてるなら、もう、
待ったりしない」
自分で言った言葉が、胸を締め付ける。
返ってくるであろう彼女の言葉を想像すれ
ば、なお胸が痛んだ。
「別に……」
細く息を吐いて、彼女が口を開く。俺はその
先の言葉を待って、じっと耳を澄ました。
「嫌ってなんか、ない。けど、出来れば、
会いたくなかっただけ」
やはり、彼女の答えは胸をしめつけるもの
だった。ため息とも、笑いともとれない息が
漏れて、彼女の肩を離す。
一段上から振り返った彼女を、俺はもう、
見ることが出来なかった。
「嫌いじゃないけど、会いたくないか。諦め
が悪くて我ながら見苦しいけど、もし、理由
があるなら聞かせてくれない?」
-----本当に見苦しかった。
それでも、このまま諦めることなんか、出来
そうもない。俺は夜空を背に、自分を見つめる
彼女の顔を覗くように見上げた。
彼女は、目を逸らさなかった。
絡み合う視線を逸らしてしまえば、逃げられ
てしまう。そう直感する。
互いが固まったまま、数秒の沈黙が流れた。
けれどドアの隙間から入り込んだ風が、彼女
の髪を揺らした瞬間、俺は手にしていたグラス
を置いて立ち上がった。
はっ、と、ゆづるが身を翻す。
俺はドアの向こうに消えた彼女の背中を、
追いかけた。
まさかこんな風に、逃げられるとは思って
いなかった。だから、奥の席に身を隠すこと
なく、ずっとカウンター席に座っていたのだ。
重い扉を開けて、階段を掛け上がる。
手を伸ばしてガシリと細い腕を掴むと、
バランスを崩した彼女が声を上げて腕の中
に倒れ込んできた。
「きゃ……っ!!」
軽い衝撃と共に、彼女の頭が鎖骨にあたる。
鈍い痛みに顔をしかめながら、それでも俺
は腕に力を込めて抱きしめた。
「会いたかった」
苦しげに吐き出した言葉が、暗く狭い空間
に消える。彼女の肩が小さく震えたのを確か
めて、俺は擦れた声で続けた。
「でも、逃げるほど嫌われてるなら、もう、
待ったりしない」
自分で言った言葉が、胸を締め付ける。
返ってくるであろう彼女の言葉を想像すれ
ば、なお胸が痛んだ。
「別に……」
細く息を吐いて、彼女が口を開く。俺はその
先の言葉を待って、じっと耳を澄ました。
「嫌ってなんか、ない。けど、出来れば、
会いたくなかっただけ」
やはり、彼女の答えは胸をしめつけるもの
だった。ため息とも、笑いともとれない息が
漏れて、彼女の肩を離す。
一段上から振り返った彼女を、俺はもう、
見ることが出来なかった。
「嫌いじゃないけど、会いたくないか。諦め
が悪くて我ながら見苦しいけど、もし、理由
があるなら聞かせてくれない?」
-----本当に見苦しかった。
それでも、このまま諦めることなんか、出来
そうもない。俺は夜空を背に、自分を見つめる
彼女の顔を覗くように見上げた。
彼女は、目を逸らさなかった。