Diary ~あなたに会いたい~
 「うん、いい画だね。素晴らしいよ。モデル
が恭さんだからかな?僕もこの辺にいたんだけ
どねぇ」

 背後に立っていたマスターがカウンターの
右端を指して笑う。
 俺は苦笑いをしながら、茶を濁した。

 「時間が足りなかったのかもな。けど、色鉛
筆だけでこんな凄い画が、描けるもんなんだな。
しかも、たった数時間で。俺には絵心がないか
ら、羨ましいよ」

 心底、感心しながら息をつくと、そうだね、
とマスターが肩を叩いた。

 「さ、店を閉めるから……恭さんも、帰って
休んだ方がいい。顔色があまり良くないよ。
このところの夜ふかしが堪えてるんじゃない
か?」

 白い歯をにっ、と見せて笑う。

 「ありがとう。そうするよ」

 俺は両手を高く上げて組むと、強張った身体を
思い切り伸ばして頷いた。
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