Diary ~あなたに会いたい~
頬に触れていた指で、ゆづるの唇に触れる。
ふっくらとしたそれは、俺を拒まなかった。
静かに目を閉じて、彼女が息を止めた。
引き寄せられるように、やさしく唇を重ねれ
ば、それだけでふわりと甘く、唇が濡れる。
じん、と胸の奥が震えて唇を離せなかった。
俺は何度も、軽く重ね合わせるだけの口付け
を繰り返した。
ふ、と漏れたゆづるの息が、濡れた唇をくす
ぐった。息苦しさで開きかけた唇を割って、舌
を差し込んでも彼女は拒まない。
応えるように、柔らかなそれが絡みついた
瞬間、身体の芯が熱く震えた。
俺は深く唇を重ねたまま、ベッドに手をついて
彼女を押し倒した。
ふたりの体が羽毛布団の中に沈んだ。
-----その時だった。
カラン、コロコロと乾いた音を立ててベッド
から数本の色鉛筆が落ちた。
はっ、とキスを止めて彼女が目を見開く。
唇を離して見下ろした彼女の瞳はもう、夢
から覚めてしまったお姫様のそれだった。
俺は、苦笑いをしながら身体の熱を鎮める
しかなかった。
「ごめん。画を……描くんだよな」
コツリと額を合わせて、浅くため息をつく。
彼女は、そうね、と笑って俺の頬に触れた。
「早くしないと、月が逃げちゃう」
低く穏やかな声で、子供を宥めるように言う。
俺は仕方なく、身体をどけてベッドから起き
上がった。その足に、ついさっき、ベッドから
落ちた色鉛筆があたる。
俺は手に取ってそれを眺めた。
「ずいぶん短いな」
親指と人差し指の間に挟んで月明かりにかざせ
ば、黄色い色鉛筆の端に「503」と3ケタの数字
が印字してある。
おそらく、品番だ。
「よく使うから。その色は特にね」
身体を起こして髪を掻き上げると、微笑んで
他の色を拾った。けれど、その手の中にあるどの
色鉛筆も、短かかった。
カッターでキレイに削られた芯は長く、持ち手
となる木の部分は5、6センチしかない。
俺は手に持っていた色鉛筆を彼女に渡して椅子
に戻ると、先ほどのポーズをとって言った。
ふっくらとしたそれは、俺を拒まなかった。
静かに目を閉じて、彼女が息を止めた。
引き寄せられるように、やさしく唇を重ねれ
ば、それだけでふわりと甘く、唇が濡れる。
じん、と胸の奥が震えて唇を離せなかった。
俺は何度も、軽く重ね合わせるだけの口付け
を繰り返した。
ふ、と漏れたゆづるの息が、濡れた唇をくす
ぐった。息苦しさで開きかけた唇を割って、舌
を差し込んでも彼女は拒まない。
応えるように、柔らかなそれが絡みついた
瞬間、身体の芯が熱く震えた。
俺は深く唇を重ねたまま、ベッドに手をついて
彼女を押し倒した。
ふたりの体が羽毛布団の中に沈んだ。
-----その時だった。
カラン、コロコロと乾いた音を立ててベッド
から数本の色鉛筆が落ちた。
はっ、とキスを止めて彼女が目を見開く。
唇を離して見下ろした彼女の瞳はもう、夢
から覚めてしまったお姫様のそれだった。
俺は、苦笑いをしながら身体の熱を鎮める
しかなかった。
「ごめん。画を……描くんだよな」
コツリと額を合わせて、浅くため息をつく。
彼女は、そうね、と笑って俺の頬に触れた。
「早くしないと、月が逃げちゃう」
低く穏やかな声で、子供を宥めるように言う。
俺は仕方なく、身体をどけてベッドから起き
上がった。その足に、ついさっき、ベッドから
落ちた色鉛筆があたる。
俺は手に取ってそれを眺めた。
「ずいぶん短いな」
親指と人差し指の間に挟んで月明かりにかざせ
ば、黄色い色鉛筆の端に「503」と3ケタの数字
が印字してある。
おそらく、品番だ。
「よく使うから。その色は特にね」
身体を起こして髪を掻き上げると、微笑んで
他の色を拾った。けれど、その手の中にあるどの
色鉛筆も、短かかった。
カッターでキレイに削られた芯は長く、持ち手
となる木の部分は5、6センチしかない。
俺は手に持っていた色鉛筆を彼女に渡して椅子
に戻ると、先ほどのポーズをとって言った。