Diary ~あなたに会いたい~
「ああ、来られましたか。どうぞ中へ」
こちらを振り返った医師が大きく頷いて、
父親を側へ呼んだ。はあ、と気の抜けるよう
な返事をして父親が前に進む。
すると、窓側の椅子に座っていた男が立ち
上がり、すっと頭を下げた。
「お気持ちはわかりますよ。私も驚きまし
た。世の中には自分に似た人間が3人いると
いいますが、彼の場合、生まれ変わりだと
言われても信じてしまいそうなほどです」
医師の言葉に頷いて、父親は男を見つめた。
男は少し困ったような顔をして「永倉恭介と
申します」と名乗った。
どうやら、この状況がまったく呑み込めて
いないようだ。事情を知っているのは、この
医師と父親だけ、という事だろう。
僕はどうすることもできずに、ただ、この場
の成り行きを見守っていた。
「どうやら、彼は“ゆづる”さんの方の知り合い
のようです。偶然、この病院で弓月さんを見かけ
て声をかけた、ということなのですが……彼の姿
を目にした時の衝撃がどれほどのものだったか、
想像に容易い。幸い、彼が受け止めてくれたので
弓月さんに怪我はありません。が、しかし、今の
状態はどうにも説明し難い、と言うしかありま
せん」
ふむ、と唸って医師が首を傾げる。
父親は不安そうに眉を顰めて、弓月を見た。
「ところで杉村さん。そちらの男性は?」
突然、一同の視線が僕に注がれた。
病室の入り口に突っ立っていた僕は、あの、
と口を開きかけて、父親に助けを求めた。
まったく状況が読めない今、この場で自分の
存在を“弓月の恋人”と称して良いものか、わから
なかったからだ。
ところが、父親は、ちら、とベッドの向こう
に立つ男に目をやったあと、あっさりそのこと
を口にした。
「彼は弓月がお付き合いをしている、遠野
和臣さんです。ちょうど電話をもらった時、
その場に居合わせたものですから」
「……そうでしたか。あなたが弓月さんの」
医師は父親の言葉に2度頷き、僕を見た。
まるで、僕のことを知っているかのような
リアクションだ。僕はそのことに戸惑いつつも、
ぺこりと頭を下げた。
こちらを振り返った医師が大きく頷いて、
父親を側へ呼んだ。はあ、と気の抜けるよう
な返事をして父親が前に進む。
すると、窓側の椅子に座っていた男が立ち
上がり、すっと頭を下げた。
「お気持ちはわかりますよ。私も驚きまし
た。世の中には自分に似た人間が3人いると
いいますが、彼の場合、生まれ変わりだと
言われても信じてしまいそうなほどです」
医師の言葉に頷いて、父親は男を見つめた。
男は少し困ったような顔をして「永倉恭介と
申します」と名乗った。
どうやら、この状況がまったく呑み込めて
いないようだ。事情を知っているのは、この
医師と父親だけ、という事だろう。
僕はどうすることもできずに、ただ、この場
の成り行きを見守っていた。
「どうやら、彼は“ゆづる”さんの方の知り合い
のようです。偶然、この病院で弓月さんを見かけ
て声をかけた、ということなのですが……彼の姿
を目にした時の衝撃がどれほどのものだったか、
想像に容易い。幸い、彼が受け止めてくれたので
弓月さんに怪我はありません。が、しかし、今の
状態はどうにも説明し難い、と言うしかありま
せん」
ふむ、と唸って医師が首を傾げる。
父親は不安そうに眉を顰めて、弓月を見た。
「ところで杉村さん。そちらの男性は?」
突然、一同の視線が僕に注がれた。
病室の入り口に突っ立っていた僕は、あの、
と口を開きかけて、父親に助けを求めた。
まったく状況が読めない今、この場で自分の
存在を“弓月の恋人”と称して良いものか、わから
なかったからだ。
ところが、父親は、ちら、とベッドの向こう
に立つ男に目をやったあと、あっさりそのこと
を口にした。
「彼は弓月がお付き合いをしている、遠野
和臣さんです。ちょうど電話をもらった時、
その場に居合わせたものですから」
「……そうでしたか。あなたが弓月さんの」
医師は父親の言葉に2度頷き、僕を見た。
まるで、僕のことを知っているかのような
リアクションだ。僕はそのことに戸惑いつつも、
ぺこりと頭を下げた。