塁のふしぎな日曜日
はぁ、はぁ……
息を切らしながら、しばらく走り、ワニが追いかけて来ないのを見届けると、俺は、足を緩めた。
ここからは、慎重に行こう。
いつまた別のワニが出てくるかもしれない。
俺は、ゆっくり歩いていく。
その時、道が草むらから、ぬかるんだ泥道に変わった。
ほっ……
これで草と間違えて、ワニの尻尾を踏むことはないぞ。
そう思った時、その泥の中に見覚えのある足跡を見つけた。
これ、神社の参道で見たのと一緒?
気になった俺は、神社の時と同じようにその足跡をたどり始めた。
辺りを気にしながら、ゆっくり辿っていくと、道は林へと入っていく。
うるさいくらいに聞こえる鳥の鳴き声を遠くに聞きながら、ゆっくりと進んでいくと、木の陰に黄色と黒の縞模様を見つけた。
猫じゃない!
虎だ!
思わず息を呑んだ俺は、そっと後ずさった。
気づかれないうちに逃げなきゃ!
ゆっくりゆっくり後退りを始めたその時……
パキッ
俺の足は、小枝を踏んだ。
その瞬間、虎は顔を上げてこちらを向く。
がるる……
虎は喉を鳴らした。
どうしよう?
今日持ってきたお菓子は、さっき全部投げちゃった。
走って逃げる!?
でも、ワニとは違って、虎は走るの速そう。すぐに追いついて背中から襲われそうな気がして、走り出せない。
しばらく虎から目を逸らすことができずに見つめていると、不思議なことに気づいた。
もしかして、泣いてる?
悲しそうな目をした虎は、俺から目を逸らすと、そのまま左前足をペロペロと舐め始めた。
あっ!
俺はその前足を見て驚いた。
その縞模様に紛れて気づかなかったけれど、虎の前足には、針金が絡まっている。
もしかして、参道の工事に使ってた針金を踏んじゃったのかな?
かわいそうに……
でも、どうしよう。
取ってあげたいけど、虎に近づくのは、やっぱりちょっと怖い。
俺は、しばらく動けなくて、そのまま虎を眺めていた。
でも、やっぱり、このままじゃ、かわいそう。
「ねぇ、虎さん、その針金、取ってあげるよ。だから、何もしないでじっとしてて」
俺がそう声をかけると、虎はクゥと小さく鳴いた。
俺はゆっくりと虎に近づき、絡まった針金をゆっくりと解いていく。
針金で切ったのか、肉球からは微かに血が滲んでいる。
「ちょっと待ってて」
針金を取り終えた俺は、リュックを下ろし、手にしていた地図をしまい、代わりに外ポケットから絆創膏を取り出した。
俺はすぐに怪我をするからって、母さんがいつも入れておいてくれる絆創膏を虎の肉球に貼ってやると、虎は、今度は嬉しそうにクゥと鳴いた。
息を切らしながら、しばらく走り、ワニが追いかけて来ないのを見届けると、俺は、足を緩めた。
ここからは、慎重に行こう。
いつまた別のワニが出てくるかもしれない。
俺は、ゆっくり歩いていく。
その時、道が草むらから、ぬかるんだ泥道に変わった。
ほっ……
これで草と間違えて、ワニの尻尾を踏むことはないぞ。
そう思った時、その泥の中に見覚えのある足跡を見つけた。
これ、神社の参道で見たのと一緒?
気になった俺は、神社の時と同じようにその足跡をたどり始めた。
辺りを気にしながら、ゆっくり辿っていくと、道は林へと入っていく。
うるさいくらいに聞こえる鳥の鳴き声を遠くに聞きながら、ゆっくりと進んでいくと、木の陰に黄色と黒の縞模様を見つけた。
猫じゃない!
虎だ!
思わず息を呑んだ俺は、そっと後ずさった。
気づかれないうちに逃げなきゃ!
ゆっくりゆっくり後退りを始めたその時……
パキッ
俺の足は、小枝を踏んだ。
その瞬間、虎は顔を上げてこちらを向く。
がるる……
虎は喉を鳴らした。
どうしよう?
今日持ってきたお菓子は、さっき全部投げちゃった。
走って逃げる!?
でも、ワニとは違って、虎は走るの速そう。すぐに追いついて背中から襲われそうな気がして、走り出せない。
しばらく虎から目を逸らすことができずに見つめていると、不思議なことに気づいた。
もしかして、泣いてる?
悲しそうな目をした虎は、俺から目を逸らすと、そのまま左前足をペロペロと舐め始めた。
あっ!
俺はその前足を見て驚いた。
その縞模様に紛れて気づかなかったけれど、虎の前足には、針金が絡まっている。
もしかして、参道の工事に使ってた針金を踏んじゃったのかな?
かわいそうに……
でも、どうしよう。
取ってあげたいけど、虎に近づくのは、やっぱりちょっと怖い。
俺は、しばらく動けなくて、そのまま虎を眺めていた。
でも、やっぱり、このままじゃ、かわいそう。
「ねぇ、虎さん、その針金、取ってあげるよ。だから、何もしないでじっとしてて」
俺がそう声をかけると、虎はクゥと小さく鳴いた。
俺はゆっくりと虎に近づき、絡まった針金をゆっくりと解いていく。
針金で切ったのか、肉球からは微かに血が滲んでいる。
「ちょっと待ってて」
針金を取り終えた俺は、リュックを下ろし、手にしていた地図をしまい、代わりに外ポケットから絆創膏を取り出した。
俺はすぐに怪我をするからって、母さんがいつも入れておいてくれる絆創膏を虎の肉球に貼ってやると、虎は、今度は嬉しそうにクゥと鳴いた。