エリート放射線技師は、ウブな彼女をたっぷりの溺愛で甘やかす。
「……抱きしめるのは、帰ってからにするよ」
「は、は、はいっ……もう行ってください!」
「うん、行ってくる」
彼を玄関まで見送り、玄関のドアが閉まるとしゃがみ込み顔を下に伏せた。
「う〜……こんなんで保つのかな」
同居なんて急すぎるよ。でもまずお父さんに謝らないと……お手伝いの野神さんにも電話しよう。
スマホを取り出し連絡先のページを開き【お父さん】のタップしてから発信を押した。すると三コールほどで「はい」と応えた。
「……お、お父さん?」
『おー香澄か、電話してくるかなーって思ったよ』
「昨日は感情的になってごめんなさい……あの、同居のこと聞いたんだけど……なんで同居?」
『まあ、以前から考えていたんだが迷ってたんだよ。だけど、昨日香澄が千晃くんのことを言っていて両想いだと言うことが分かったから同居いいなと思ったんだよ』
「そんな、でも……千晃さんに迷惑が」
『大丈夫だよ、千晃くんには“大丈夫”だと言ってくれたから』
「お父さんが言わせたんじゃないの?」
お父さんが圧をかけたのかもしれない……。立場的にお父さんの方が上だし、有り得る。