ハツコイ〜僕らははじめてだった〜
「舞、ごめんな。ありがとう。」

「ううん。じゃあ、行こっか。」

舞が財布を鞄に入れながら言った。

「ん。」

克が手を差し出す。
舞は嬉しそうにぎゅっと握った。

ーーー

「色んなお店ができてるねー!」

「飯食うところも沢山。」

「うん。…あ!あそこ行ってみたい!」

舞が指差した先には占いの館と書いてある。

「占いの館…舞占い好きなの?」

「好きっていうか…これから先
どんなことが待ってるのか
ワクワクしない?
何て言われるのかなーって思って。」

「確かに。じゃぁ、行ってみよ。」

2人は少し薄暗い館の中に入った。
中にはそれぞれ占いの部屋があり
部屋の前には、占い待ちの人が並んでいる。

「舞、どこがいいとかある?」

「んー。よくわかんないね。
とりあえず1番並んでるところにしようか。」

そういうと、舞と克は列の最後尾に並んだ。
部屋の名前には、「杏」と書いてある。

「あんず先生っていうんだね。
それに、タロットで占ってくれるみたい。
楽しみ。」

舞が前の人の話を聞いて
こしょこしょと克に囁いた。

「舞、何占ってもらう?」

「どうしようか。別々に占う?
それとも2人で占ってもらう?」

「せっかくだから2人にしよう。」

「うん。…今さらだけど
少し怖くなってきた。
別れなさいとか言われたらどうしよう。」

「…何?言われたら別れるわけ?」

少しムッとした克が舞に言った。

「別れないよ。
ただショックだなと思って。」

舞は慌てて否定した。

「その時は、別れないために
どうすればいいか占ってもらったらよくね?」

「そっか。そうだね!
さすが、克、頭いい!」

パァッと顔を明るくした舞が
キラキラとした眼差しで克を見た。

「ただ、俺が舞を離したくないだけ。」

真剣な表情でそう呟く克。

ドキンッ

心臓が波打つ音がわかった。
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