ハツコイ〜僕らははじめてだった〜
「ごめん。ちょっと遅くなった。」

朝練帰りの克が息を切らして
自転車から降りた。

「全然大丈夫だよー。
朝練で忙しいから、わざわざよかったのに。」

階段に座っていた舞が
立ち上がって克に駆け寄る。

「だって、付き合ってはじめての
舞の誕生日じゃん?やっぱ会いてーって
なって。え、…俺だけ?こんな好きなの。」

克が舞の顔を覗き込んだ。

「…その顔、ズルいー。
わかってて言ってるでしょ!
私だって、すっごく会いたかったし
嬉しかったよ。」

舞は恥ずかしさで、俯きながら言った。

「ならよかった!」

克がニカっと笑って、舞の髪を撫でた。

「それと…舞これ、途中で買ってきた。」

克がパサっと、自転車の籠に入れていた
花束を舞に手渡した。

「わっ!私に?」

舞が花束を抱きしめて花に顔を埋める。

「いい匂い。それにちっちゃくって可愛い。」

「アメリカンブルーっていうんだって。
今日が誕生日だって話したら
花屋のおばちゃんが
その花でブーケ作ってくれた。」

「ブーケには珍しいお花だね。
何か意味があるのかなぁ?」

「…あふれる想いとか、2人の絆って
意味があるらしい。」

「わー!今の私の気持ちにぴったり!」

舞は喜んで叫んだ。

「…そうくるとわ。
俺は、俺の気持ちがダダ漏れなんかと
思って、めっちゃ恥ずかしかった。
舞がそう捉えてくれて、よかったよ。」

克が照れくさそうに言った。

「お花屋さんって、本当素敵だね。
綺麗だけじゃなくって、花言葉とか
送り手の気持ちに寄り添えるって。」

「本当な。…あと…これも。」

克が鞄から封筒を取り出した。

「…手紙?」

舞は克から封筒を受け取ると
封に手をかけた。

「だー!!これは、帰ってから読んで!!」

中を開けようとする舞に気付いた
克は、パッとその手を制止した。

「えー!いいじゃんっ。」

舞が意地悪そうに克に言う。

「面と向かって読まれたら
恥ずかし死にするわ!」

克が興奮して舞に言った。

「ふふ、わかった。ありがとう。
お家でゆっくり読むね。
本当、全部嬉しかった!ネックレスも
お花も、まさか手紙も貰えるなんて。」

舞はホクホクした顔で克に言った。

「克の彼女になれて、本当幸せだよ。
いっぱい大切にしてくれてありがとう。」

花と手紙を抱きしめ、嬉しさを
抑えられない様子でいる。

「…その顔、反則。」
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