ハツコイ〜僕らははじめてだった〜
「じゃあ、次はピアノと指揮者。
誰かやりたい人いますかー?」

スッと手が挙がる。

優香だ。

「おー、松本、ありがとう。
他にやりたいやつ居ないかー?」

生島先生が拓実に代わって声をあげる。
周りを見渡す皆。

「…いないな。じゃぁ、ピアノは松本で。」

希望が黒板に板書していく。

「じゃあ、次指揮者。やりたい人ー?」

誰も手が挙がらない。
少しの間沈黙が続いた。

「脇田くんがいいと思います。
背おっきいし、手も大きいから。」

杏美が言った。

ガタッと立ち上がる克。

「いやいや、杏美ちゃん
手がおっきいとか関係ねーから。」

2人の掛け合いに皆が笑った。

「脇田に決定っと。」

すかさず拓実が言う。

「ちょ!拓実も待ってー!
俺、まじでリズム感覚ないからー!」

克が慌ててストップをかけた。

「拍子は、松本がリードしてくれるから
克は、最悪、それに合わせればいいぞ。
ピアノも指揮者もそれぞれ賞があるから
2人とも狙えよー!
歌も合わせて3冠を狙おう。」

生島先生も話を進める。

「もー、いっしーまで。
マジで俺、自信ないー。」

克はうなだれながら椅子に腰掛けた。

「ぜひ、克には指揮者でこれから習得する
リズム感をぜひ剣道で生かしてもらって
…皆克のことサポートしてくれるか?」

生島先生が皆に声をかける。

「もちろーん。」

「克ファイトー。」

「もーまじかー。
本当に剣道に生かせるんですかね。
…んーわかりました。
頑張ります。」

克も仕方なしに了承した。

ーピアノ 松本優香ー
ー指揮者 脇田克ー

希望の綺麗な字が2つ並ぶ。


チクン


何でもないことに
舞の胸が少し痛んだ。
< 123 / 294 >

この作品をシェア

pagetop