ハツコイ〜僕らははじめてだった〜
「…できたっと。」

希望が模造紙を広げた。
綺麗な字で、ひとつひとつ丁寧に書かれている。

「ありがとう。見やすい。」

「拓実くん、あのね、今思ったんだけど
課題曲、当たり前だけどどのクラスも
一緒じゃない?だから、何か違ったことが
できたらいいなぁって思って。」

「違ったこと?」

「うん。例えば…手話とか。
全部は大変だから、サビの部分だけ。」

「手話かー!いいかも。
明日、皆に提案してみよう。
あ、だけど手話教えられるかな?」

「それね、えっと、他の学校で
優勝したクラスの動画がアップされてた。」

そう言うと、舞が携帯を出して
動画を探しだした。

「どれどれ。」

拓実が席を立って、希望の隣にきた。
画面を覗き込む2人。

「わっ。…拓実くん。顔、近いー。」

「んー?そう?」

意地悪そうな顔でもっと顔を近付ける拓実。

「ひゃぁ。死んじゃう。」

顔を真っ赤にする希望。

「ぷっ。希望ちゃん本当可愛い。」

「もー。からかわないで。」

「だって、本当だもん。でもこのアイディア
いいね。さっすが希望ちゃん。」

「本当?よかった。」

「じゃぁ、あとは明日皆でパート分けして。
あ、楽譜コピーしとこうか。」

「うん。あ、じゃあ台紙つくるね。」

「ありがとう。印刷室行かないと
いけないんだけど、…一緒いたい。」

拓実が、ぼそっと呟いた。

「…んー、じゃあ拓実くん、後で一緒行こう。
台紙も人数分印刷しなきゃだし。」

希望も恥ずかしそうにそう言った。
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