ハツコイ〜僕らははじめてだった〜
「やった。てか呼び方、拓実でいいよ」

拓実の提案に、ふるふると首を振る希望。

「何で?嫌?」

「だって、恥ずかしいんだもん。」

「えー?別にいいのに。
そしたら俺は、のんちゃんで。」

「…じゃあ、…たくちゃん、にする。」

「たくちゃんね、オッケー。」

やりとりの間に
サラッと台紙を仕上げる希望。

「やっぱ、のんちゃん上手なー。」

台紙を見て感心する拓実。
表紙には、桜の木とベンチが
そして、裏表紙には、自由曲のサビの
手話がイラストで描かれていた。

「ちょっとでも、わかりやすくと思って。」

手話のイラストを眺めながら
優しく微笑む希望。

「…そういうとこ、本当好き。」

「えっ?」

「えっ?…今俺、声出てた?」

「…うん。」

「わー、まじ恥ずかしい。」

拓実が顔に手を当てて空を見上げた。

「でも、そうやって想ってくれてるんだ
ってわかって、嬉しかったよ。」

「印刷室行こ。」

照れた拓実は
そそくさと美術室を出て行った。
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