ハツコイ〜僕らははじめてだった〜
教室に戻ると、克も席に着いていた。
詩織との話を思い出して、また少し
ドキドキする。
(はぁ、詩織があんなこと言うから
無駄に意識しちゃうよ。)

舞の百面相に気付いて克が言った。

「まーい。何考えてるの?俺のこと?」

意地悪そうに笑う克。

「…。」

「うん。」

「なんてね。…って、は?」

「え!?私今声に出てた?」

「…出てた。」

「ちょっと、今のなし。忘れて。」

「いや、無理。どういうこと?」

「本当違うの。これは私の問題だから。」

「…何、ちょー気になるんですけど。」

克が身を乗り出して舞を覗きこむ。

「近い。もぉ、本当わかんないんだって!」

真っ赤にして顔を覆う舞。

「…そか。んー、その考えてくれてること
もしかしたら、俺が舞に考えて欲しい
って思ってることかもしれないから
ちゃんと考えて。…そしてその答え教えて。」

「え?」

「鈍感な舞は辿り着かないかもだけど。」

「もー!克まで、鈍感、鈍感言わないで。」

「いや、お前、克幸並だから。」

「かっちゃんよりは、マシだと思う。
…多分。」

「いや、詩織ちゃんも本当苦労するよ。
そして、俺も。」

「何で、克が苦労するのよ。
…てか、やっぱ詩織が好きなの伝わる?」

「伝わる!てか、バレバレ。」

「だよね。でも長年想ってるから
本当、応援してるし、幸せになって欲しい。」

「うん。そうだな。詩織ちゃんいい子だし。
克幸もいい奴だし、俺も応援する。」

「本当?やった!ありがとう!嬉しい♡」

舞はニコッと笑った。

「…本当、そういうところな。」

「え?」

「なんでもない。とりあえず舞は
自分のことをさっさと考えろ。集中、集中!」

(もー、何それ。もっとわかんなくなってきた。)
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