ハツコイ〜僕らははじめてだった〜
[ブーブーブーブー]

「もしもし、お疲れ様。遅かったね。」

克からの電話。

「あー、今日もめっちゃ疲れた。
…今日の体育どうだった?何か練習の時
詩織ちゃんがキャーキャー言ってたから。」

「んー、稜先輩と将輝先輩のことかな?
バスケ部なんだけど、ダンスのペアに
それぞれなって。」

「…見てた。舞が頭触られてんのも。」

克が不機嫌そうに言った。

「あ、あれは、先輩にからかわれて…。
…克は?ペア、誰になったの?」

舞が慌てて克に話をふった。

「香織先輩。」

坂本香織、吹奏楽部だ。
2年生ではあるが、抜群のセンスで
サックスのソロパートを任されている。

「香織先輩…綺麗な人だよね。」

「うん。」


ズキンッ


克が珍しく否定しないことに
舞の胸がぎゅうっと締め付けられた。

「…克、何か怒ってる?」

舞が聞いた。

「怒られるようなことあったの?」

練習の疲れもあってか、克の声が冷たい。

「ううん。そうじゃないけど。」


…沈黙が続く。


「あー!悪い!俺のやきもち!
…前みたいに喧嘩になると嫌だから
ちゃんと言う。」

克が理由をちゃんと話してくれる。

「うん。ごめんね。
でも、本当何でもないよ。」

舞も素直に謝った。

「…うん。カッコわりーね。
舞のことになるとすぐ余裕なくなる。」

「…そんなことないよ。
私も一緒。克が香織先輩のこと綺麗って
…すぐやきもちやいちゃった。」

「あれは、ちょっと
意地悪な気持ちになったから。…ごめん。」

「ふふふ、2人してごめんばっかり。」

舞が笑って言った。

「そうだね。…あー、舞が足りない!
本当体育祭終わったら、沢山イチャイチャ
しよー!じゃないと干からびそう。」

克が電話先で悶えているのがわかる。


「うん。そうしようね。
…克、一緒帰れなくって寂しいよ…。」

舞も素直に自分の気持ちを話した。


「…舞、俺が前つけた痕って残ってる?」

克に言われて鏡を見る舞。
シャラッとネックレスだけが揺れた。

「ううん。もぉ消えちゃった…。」

「…じゃあ、また今度付け直すな。
寂しい気持ちにさせてごめん。」

「大丈夫!克も練習頑張ってね。」

「うん!そしたらまた学校で。
本当寂しくさせてごめんな。」


(あーあ、困らせちゃった。)
晴れないモヤモヤを胸に舞は眠りについた。
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