ハツコイ〜僕らははじめてだった〜
全校ダンスの後は、いよいよ応援合戦。
克も学ランに着替えて演舞の準備をしている。

「克、頑張ってね。」

「おう!舞のこれあるし。頑張れる。」

そう言って、克は刺繍の入った
ハチマキを結び直した。

(やっぱり、稜先輩に感じるかっこいいなー
っていうドキドキと、克に感じるドキドキは
全然違う。胸がぎゅっと掴まれるような
苦しい感じ。それに愛しいって気持ちになる。)

舞は克の学ラン姿を見て思った。


「…よしっ!行ってくる。」

白い手袋をつけた克が舞の髪を撫でた。


白組、青組と、それぞれの演技を行う。
流行りの歌に合わせたダンスは
皆動きが揃っていて、とてもカッコ良い。
白組は可愛く、青組はユーモアたっぷりに。
それぞれ個性が現れた演舞だった。

そして最後は赤組、克の番だ。
百花繚乱、疾風迅雷というテーマで
和太鼓に合わせて演舞がはじまる。

ゴクッと息を呑むほど
張り詰める空気感が伝わってくる。
団長の力強い掛け声が響いた。

目で追うのが精一杯なくらいの
スピードで一つ一つの演技が揃っている。
毎日の練習の成果がはっきりと現れていた。

「押忍っ!」

「はっ!」

覇気のこもった掛け声。
見ているだけでビリビリと気合いが
伝わってくるようだ。

(カッコいい。)

舞はずっと克を目で追っていた。

ダダダダダダダンッ

太鼓の音がどんどん大きくなる。
演舞もクライマックスだ。

団員が集結して、カタをきめていく。

「はっ!」

「やー!」

「押忍っ!」

ダダンッ

「ありがとうございました!」

終わりを告げる太鼓の音とともに
演舞を終えた団長が声を発すると
観客から大きな歓声が響いた。
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