ハツコイ〜僕らははじめてだった〜
「はい、麦茶。」

冷えたグラスをコトッと置く克幸。

「ありがとう。」

ヒヤッとしたグラスが気持ちいい。
緊張が抜けない詩織は、グラスに手を添えて
気持ちを落ち着けようとしていた。

「詩織、今日はありがとう。
それに…試合の後も。
かぁちゃんが言ってたけど
本当、俺、詩織が居なかったら
多分荒れてたと思う。」

真剣な目にドキンとする詩織。

「ううん。何も私はしてないよ。
ただ、泣いてただけ。ふふ、恥ずかしいね。」

「それが嬉しかった。
俺のために泣いてくれて。
だから、俺、落ち込むスキ無かった。」

優しく微笑み克幸。

「もう、本当恥ずかしい。
…でも、ずっと見てたから。
…かっちゃんのこと。
誰よりも練習して、誰よりも気ぃ張って
皆の意識高めてって…。
本当凄いなって思ってたから。
だから…悔しいのと、悲しいのと
心配なのと、大怪我じゃなくて安心したのと。
…ぐちゃぐちゃで…、…ぐすっ、
わ!思い出したら、また涙でちゃ…。」

慌てて涙を拭こうとする詩織を
ぎゅっと克幸が引き寄せた。
< 95 / 294 >

この作品をシェア

pagetop