西岡三兄弟の異常な執着

｢離せよ！お前！いてぇよ！！｣
男は基一の凄まじい力に、手を離すように訴える。

｢は？言ったよな？俺の大切な人なんだよ！？
許さねぇよ？｣
｢基一くん、もう大丈夫だから……離してあげて？｣
｢はい｣
花苗の言葉で、パッと離した基一。
そして男の耳元に口唇を寄せ耳打ちをする。

｢てか……これで終わらないから。
後から相手してやる。待ってろよ？｣

そして花苗に向き直り、微笑んだ。
｢花苗さん、屋敷まで送るからそこの車に乗ってください｣
｢え？でも、朱雀と待ち合わせてるの。だから……｣
｢おかしいなぁ。
若様はそんなこと一言も言ってなかったですよ？
まだ仕事中ですし！｣
｢え……じゃ、じゃあ……｣
｢誰からそんなこと聞いたんですか？｣
｢あ、それは…山……あ…いや、私の勘違い！
ごめんなさい！
私、帰るね！｣

花苗は、瞬間的に頭を巡らせた。
山田に嵌められたと……
前にも同じようなことがあったからだ。
でもここで山田の名前を出すと、朱雀を怒らせることになるだろう。
黄河や真白もきっと怒る。
とにかく、穏便に済ませたい。
その為には一刻も早く帰り、屋敷の中にいなければならない。

花苗は足早に、この場を後にしようと踵を返した。

｢は？花苗さん！？
ダメですよ！俺が送りますから、車に乗ってください！｣
｢あ、大丈夫だよ？一人で帰れるよ！｣
｢そうじゃなくて！
一人にはさせられません！
俺が若様に、殺されます！｣
｢え……あ、そうか…じゃあ…お願いします｣
花苗は、基一が運転する高級車に乗り込んだ。