西岡三兄弟の異常な執着
それから二日後、昼食が済みコーヒーを飲んでいた花苗。
スマホが震えた。
画面には“森宮さん”の文字。

「あ!
………もしもし?」
『花苗様?今からよろしいですか?』
「もちろん!」
『では、20分後に玄関にお願いします』
「わかった!」
バタバタ準備をし、玄関に向かった花苗だった。

森宮が着き、運転席から出てきて後部座席のドアを開けた。
「お待たせしました。どうぞ?」
森宮が手を差し出し、その手を小さく握り乗り込んだ。
「何を買うか決まってるんですか?」
森宮も運転席に乗り込んで、花苗に向き直った。
「うん、今回はジッポーを買おうかなって。
だから、ここに行ってくれる?
もうメールでお願いしてるの」
そう言って、スマホ画面を見せた花苗。
それを受け取り、森宮は車をゆっくり走らせた。

そして店で商品を受け取り、再度車に乗り込んだ。
「ご主人様方は幸せ者だなぁ!」
「え?」
「花苗様にこんな心のこもった贈り物をいただけて……!」
「そうかな?」
「僕だったら、幸せ者だなって思います!」
「フフ…森宮さんにも贈り物したいんだけど、なかなかできなくて……
協力してもらってるばかりで、ごめんね……」
「そんな……お気持ちだけで十分ですよ?
そんなことしてもらったら、ご主人様達を怒らせるだけですし……」

「…………旦那様と奥様が亡くなってからもう…十年ですね………」
「うん……」
花苗が買ったプレゼントを見つめていると、森宮がボソッと呟いた。
もうすぐ、三兄弟の両親の命日だ。

その日は三兄弟にとって特別な日で、花苗は毎年三人にお揃いの贈り物をしているのだ。
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