西岡三兄弟の異常な執着
「よろしくお願いします…!」
塩見は恐る恐る、手を握り返した。

「大変でしょ?三兄弟のお守り!
いつもご苦労様!」
「あ、いえ…」
「コーヒーも、ありがとう!
残ったシュークリームは、塩見さんが食べて?
ここはもう大丈夫だから、君は君の仕事して大丈夫だよ!」

労いも、お礼も……三兄弟からは、聞いたことがない。

「塩見さん、ありがとうございます!ほんとに、大丈夫ですから、他の作業して構いませんよ!
今日は塩見さんお一人だから……」
花苗も微笑み、塩見に言った。

そうなのだ。
今日はたまたま、塩見が一人で作業している。
なので花苗も気を遣い、昼食は朝食の残り物や使ってない部屋の掃除は省くなどをして、負担を減らすようにしてもらっていた。
「ありがとうございます!お気を遣わせて、申し訳ありません」
「いえ…こんな広いお屋敷を一人でなんて大変ですよ!私には、気を遣わなくて大丈夫ですよ!」
「確かに、一人は大変だな。
お疲れ様!」
花苗と紫苑が微笑んで、塩見を見上げた。

もしこの二人が夫婦だったとしたら、こんな方々の使用人になりたい。
塩見はそんなことを考えていた。

「塩見さん?」
「どうしたの?俺達、なんか変なこと言ったかな?」

「あ、いえ…お二人は、とてもお似合いだなと思って……」

「「え……?」」
一瞬で……二人を包んでいた穏やかで優しい雰囲気が、ピリッと張りつめた。

「あ……す、すみません!変なこと言って……」

「ううん。そう見える?」
紫苑が切なそうに顔を歪めて呟いた。
花苗は俯いてしまった。
「あ、はい…」
「そう……でも、三兄弟の前では言わないでね……」
更に切なく顔を歪ませ、紫苑が静かに言ったのだった。
< 50 / 93 >

この作品をシェア

pagetop