社長宅の住み込みお掃除係に任命されました②
ピロピロリン……

タイトルも分からないメロディがスマホから流れる。

ん……

私は手探りで枕元のスマホを探す。

で、木製のヘッドボードに手が当たった瞬間、目が覚めた。

そうだ、ここ、うちじゃない!

私は、慌てて飛び起きて、スマホのアラームを止める。

急いで服を着替えて、部屋を出ると、昨日目にした惨状がそのままであることを確認して、ため息をついた。

これ、ほんとに私、やっていけるの?

でも、そんなこと考えても仕方ない。

できるかできないか、じゃなくて、やるかやらないかだと思うから。

私は大きく深呼吸をすると、キッチンに向かった。

冷蔵庫を開けてみる。

やっぱり。

中には見事に何もない。

買い物に行く?

でも、鍵もお金も持ってないからなぁ。

私は、朝食を作るのを諦めると、ゴミ袋を求めて、ゴミ箱の近くを探してみる。

見当たらない。

仕方なく、ゴミ箱にかかっているゴミ袋を外した。

あ、あった!

ゴミ袋を外したその下にゴミ袋はそっと置いてある。

でも、せっかく外したし、これでいいか。

私はそのままゴミ袋を持って部屋を回る。

もう!
何でゴミをそのままにしておくの!?

私は、親の仇とばかりにゴミをゴミ袋に放り込んでいく。

ざっと拾い終えたら、今度はソファーに脱ぎ捨てられてる衣類をたたみ始める。

これ、クリーニングに出した方がいいよね?

コートを手にしてそんなことを思った私は、洗濯するものとクリーニングに出すものを分けていく。

一通り分けたところで、洗濯機の場所を確認しようと立ち上がった。

きっと脱衣所にあるはず。

私は、ソファーの角をくるりと曲がって駆け出そうとした途端、ぼすっと何かにぶつかった。

「朝から元気だな」

聴き慣れた低い声が頭上から降ってくる。

私は慌てて、後ずさって姿勢を整える。

「社長! おはようございます」

ペコリと頭を下げると、その頭にぽんと大きな手が置かれた。

「仕事じゃないんだから、そんなきっちりしたお辞儀はいらないぞ」

そう、この大きな手の主は社長。

昨夜から、うちに社長がいる生活が始まったんだ。

ん?
違う。
社長のうちに、私がいる生活が始まったんだ。



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