天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~
突然の帰国
「俺にもチャンスをくれ。半年……いや、三カ月でいい。その間に、お前の心を手に入れてみせる」
梨木家と貴船家の家族会議に突然乱入してきた勇悟は、強い眼差しで私を見つめ、そう言った。
私は夢でも見ているのだろうか。そう疑ってしまうほどに、彼とは長い間会っていなかった。
それでも、目の前の婚姻届を埋めようとしていた手は止まり、断ち切ったはずの彼への想いが、いとも簡単に蘇ってくる。
「連絡もなしに帰ってきたかと思えば、なにを勝手なことを。今さらそんなことを言われたって、絢美も困るよな?」
隣に座っていた聡悟くんが、私の顔を覗く。
今この瞬間まで、私は聡悟くんとの結婚を受け入れようとしていた。迷いはなくなったはずだった。勇悟さえ、目の前に現れなければ。
「私……」
「頼む、絢美。俺は本気だ」
「虫がよすぎるんじゃないか? それならどうしてずっと帰国しなかった?」
「黙ってくれ聡悟。俺は絢美と話しているんだ」
私が口ごもっている間に、ふたりの言い争いが始まってしまう。
この状況、いったいどうしたらいいんだろう……?
鏡に映したかのようにそっくりな彼らの顔を見比べ、私はパニックに陥っていた。
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