天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~

 しかし、柿田さんの言葉に心当たりがなさすぎて、私の頭の中にはたくさんの疑問符が浮かんだ。

「余計なこと?」

 思わず聞き返したら、今度は桃瀬さんが口を開く。

「去年、遊園地で会った時のことです。私は絢美さんに勇悟さんのことをわざと悪く言って、柿田さんは勇悟さんに、絢美さんが好きなのはお兄さんの聡悟さんだと伝えました」

 え……? どういうこと? 頭の中が整理できない。

「ふたりとも、あの時私と一緒にいたのが勇悟だとわかっていたの?」
「そうです。あの日私たち、聡悟さんの指示でおふたりのデートを監視というか、尾行していて」

 そこで聡悟くんの名前が飛び出し、ぞわりと嫌な感覚が全身を包む。

 柿田さんと桃瀬さんは思わず片腕をさする仕草をした私に気の毒そうな視線を向け、詳しい話を聞かせてくれた。

 誕生日デートの三日前、三人でお酒を飲んだ日。先に帰っていく私を店先で見送った二人の前に、突然聡悟くんが現れたのだそうだ。

 私たちがよく行く居酒屋の話は聡悟くんも知っていたので、待ち伏せていたのかもしれない。

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