天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~
そうだったのか……。聡悟の口から語られる嘘は、俺の記憶にも残っているものばかりだ。
俺はそのたびに、絢美への想いを封印しようと躍起になった。聡悟の思惑通りに踊らされていたわけだ。
「しかし、結局僕は負けた。絢美も院長の椅子もお前に奪われ……いっそ死んだほうがましだったかもしれないのに、一番憎い相手に命を救われた。プライドはズタズタだ」
「ちょっと待て、聡悟。そのことだけど、お前はなにか勘違いしている」
「勘違い?」
聡悟のうつろな瞳が、俺に向けられる。
せっかく命が助かったというのに、生きる気力を失った、暗い色の瞳。そこに光を与えられると信じて、俺は正直に胸の内を吐露した。
「俺は別に、院長の肩書きに興味はないし、そんな器でもない。むしろ、お前の方がうまくやるだろう。親父は絢美を射止めた方に院長を、なんて言っていたけど、その役割は聡悟にお願いしたい。オペしかできないんだよ、俺は」