天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~
俺にとっては、それこそがコンプレックスだった。聡悟は人の心をつかむのがうまく、組織や人の上に立つ素質がある。
双子だからって同じ人間ではないから、できることが違うのは当たり前なのに……どうしても聡悟と自分を比べて、劣っているような気がしていた。
聡悟はゆっくり天井を仰ぎ、目を閉じる。瞬間、目の端からひと筋の涙がこぼれた。
再び瞼を開いた聡悟は、俺を見つめてふっと苦笑する。
「譲ってくれるなら、院長の椅子より絢美の方がよかったのに」
その目には、微かながらも光が灯っているように見えた。
「……それだけは渡せねえよ」
聡悟は俺の答えを鼻で笑い、「つまらないな、素直になっちゃって」と文句を言った。
こんな風に兄弟で腹を割って話したのはいつぶりだろう。照れくさいので聡悟には言わないが、まるで幼い頃に戻ったようで、俺はうれしかった。
*
「絢美。聡悟、助かったよ」
《よかった……。もう、それを聞くまでは眠れないと思ってたの》
夜遅く、病院の屋上庭園で、俺は絢美に手術の成功を報告した。
息も凍りそうな寒さだが、すがすがしい気持ちなので気にならない。冬の澄んだ夜空にはたくさんの星が見えた。