天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~
ちなみに勇悟へのプレゼント用に選んだのは、生チョコのように濃厚でしっとりしたブラウニーのレシピ。
材料は信頼のおける佳味百花で選んだし、家族にも好評だったから、味は保証できるはずだ。
「へえ。期待できそうだな。家でゆっくり味わうよ」
「うん」
ようやく念願だったバレンタインのやり直しが叶い、私はとても満足した気持ちで夜景に視線を戻す。
すると、ふと勇悟の右手が私の左手をギュッと握り、さりげなく距離が縮まる。
ドキッとして勇悟を見上げたら、彼は周囲の人々の目を盗み、素早く私に口づけた。
まさか、こんな場所でキスするなんて……!
内心パニックになっている最中、ふと左手の違和感に気づく。思わず顔の高さまで持ち上げてみると、いつの間に嵌められたのだろう、薬指にまばゆいダイヤモンドの指輪が輝いていた。
「勇悟、これ……」
「これからは、もっと近くで絢美とお腹の子を守らせてほしい。結婚しよう、絢美」
彼らしい力強い言葉でのプロポーズに、感極まって胸が熱くなる。
指輪と勇悟とを交互に見つめているだけで、なみなみと目に涙が溜まってくる。