天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~

 三月末の健診で偶然院内の廊下で聡悟くんに会った時には、彼とも久々に話すことができた。

「双子なんだってな。おめでとう」

 そう言ってくれた彼は、一度は生死の境を彷徨ったとは思えないくらい元気そうだった。それに、表情も昔のようにやわらかい。

「ありがとう。聡悟くんも院長になるんだよね? おめでとう」
「勇悟に押しつけられた形だけどな。ま、やるからにはベストを尽くすよ」

 彼の頼もしい言葉に頷いていると、ふとどこからか視線を感じて私は辺りをキョロキョロする。

 すると、柱の陰からこちらをジッと睨んでいる、ひとりの女性看護師がいた。

 あの人、見覚えがある。もしかしていつか勇悟と親密そうにしていた?

「聡悟くん、あの看護師さん……」
「ああ、ちょうどいい。紹介するよ。――夕希(ゆき)

 聡悟くんが手招きすると、夕希さんは少し気まずそうに柱の陰から出てきて、聡悟くんの隣に並んだ。

「彼女は、望月夕希。心臓血管外科のナースで、僕の大切な人だ。夕希、彼女が勇悟の妻の絢美だ」

 聡悟くんがそう言って甘い笑みを浮かべ、私は面喰った。

 まさか、勇悟と怪しい関係どころか、聡悟くんの大事な人だったなんて。

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