天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~
「先生、いつもは私のこと本気じゃないって……」
夕希さんが、信じられないというように聡悟くんを見上げる。
聡悟くんは一瞬申し訳なさそうな顔になったが、その後は真摯な眼差しで彼女を見つめた。
「きみには感謝しているんだ。勇悟が帰国したばかりの時、それまで俺に熱を上げていたナースたちの視線が一気に勇悟の方を向いたが、きみだけは違った。腐った僕が道を誤っていた時も、術後に弱り切っていた時も、そして今も変わらず、僕のそばにいてくれる。こんな物好きはきみ以外にいないよ。かけがえのない存在だって、やっと気づいた」
「先生……」
夕希さんが頬を赤く染め、うっとりと聡悟くんに見とれる。
こちらまで恥ずかしくなるようなふたりの甘い雰囲気に、幸せをおすそ分けしてもらったような気分になった。
「聡悟くん、夕希さん、お幸せに」
「ありがとう。絢美も、勇悟のことよろしくな」
「うん」
私と勇悟だけでなく、聡悟くんも前を向いて歩き始めている。
そのことがとてもうれしくて、私はその夜帰宅した勇悟にも、聡悟くんと夕希さんの仲睦まじい様子を話して聞かせるのだった。