天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~

 * * *


 一週間前。

「絢美、ずっと好きだった。僕とこの先の人生を一緒に歩んでほしい」

 テーブルの上で、突然手を握られた。

 窓からみなとみらいの夜景が見渡せる船上レストランのカップルシート。顔を上げると、愛おしげに私を見つめる聡悟くんと視線がぶつかる。

 クリスマスを二週間後に控えた土曜日。いつもよりワンランク上のレストランに誘われ、食事中もどこか緊張気味だった彼の態度から、なんとなくプロポーズの予感はあった。

 聡悟くんのことは嫌いじゃないし、彼との結婚をお互いの両親も望んでいる。

 さらに私の想い人は今、日本にいない。いつ帰ってくるのかも不明だ。

 私は聡悟くんの顔にその想い人の面影を重ね、ただジッと彼を見つめた。

 意志の強そうな直線的な眉、彫りの深い目元、シャープな鼻に、知性的な薄い唇。私の胸には、彼とよく似た顔をした別の男の人がずっと居座っている。

 勇悟……。聡悟くんの双子の弟である彼の名を思い浮かべただけで、私の胸は切なく締めつけられた。

「聡悟くん、私……」

 こんな気持ちでプロポーズを受けることはできない。そう思って口を開いたら、聡悟くんの長い人差し指が唇に押しあてられた。

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