天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~
消せない想い――side勇悟
絢美への恋心を自覚したのは、いつからだっただろう。少なくとも俺は聡悟より自分の気持ちに気づくのが遅く、気づいた時には失恋が確定していた。
『なぁ、中等部にすげぇ美少女が入ってきたの、知ってる?』
俺や聡悟が通う中高一貫校の中等部に絢美が入学し、二週間ほど経った時期の、ある昼休み。クラスでつるんでいる仲のいい友人のひとりが、そんな情報を持ってきた。
『美少女?』
『梨木さんって言ったかな。髪はストレートのロングで、いつも小さく微笑んでて、おしとやかの権化みたいな感じでさぁ』
絢美のことか。確かに、父親に甘やかされて育ったからか、世の中の穢れを知らず天真爛漫な性格だ。
容姿も整っている方だとは思うが、子どもの頃からの付き合いだから、美少女と言われてもピンと来ない。
『ああ見えてけっこう世話が焼けるぞ』
『えっ、なにお前、知り合い?』
『まぁ……つってもただの幼なじみ的な感だよ』
別に特別な関係ではないと言い聞かせるようにそう話した反面、彼女を美少女だともてはやすヤツらより、よっぽど俺の方が彼女を知っているんだという、優越感もあった。
悩みを相談されることもあるし、勉強を教えることもある。もしかしたら、将来は夫婦になっているかも……なんて、口には出さないが得意げに思ったりした。