天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~
レストランを出た後、聡悟くんはいつものように車で私を家まで送ってくれた。閑静な住宅街に佇む一軒家の前で、彼が車を止める。
「送ってくれてありがとう。ごちそうさまでした」
「どういたしまして。おじさんたちによろしくな」
「うん。またね」
助手席から降りると、冷たい空気が頬を刺した。もうすぐクリスマスだものね。ということは、私もとうとう三十歳になるのか……。
私の誕生日は、クリスマスイブの十二月二十四日。年を重ねることに軽い失望を覚えつつ、【梨木】と表札のかかった門に向かう。
そして、重厚な金属の門扉に手をかけた時、背後で車のドアが閉まる音がした。
「絢美!」
振り向くと、どこか切羽詰まったような表情の聡悟くんが駆け寄ってきた。
なんだろうと思っている間に目の前まできた聡悟くんは、突然長身を屈めて私を抱き寄せた。背中に回された手が、ギュッと私を拘束する。
えっ? どうして急に……?
突然のことに声も出せずに固まっていると、耳元で聡悟くんがかすれた声を出した。
「きっと絢美が想像している以上に、僕は本気できみと結婚したいと思っている。それだけ、心に留めておいてほしい」
「聡悟くん……」