天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~
間もなくシャンパンが運ばれてきて、細長いフルート型のグラスに注がれる。
グラスの底から無数の泡が立ちのぼっては消える様子は、目にも楽しい。
「じゃあ、改めて。誕生日おめでとう、絢美」
「ありがとう。今日一日、すごく楽しかった」
お互いにグラスを目の高さまで上げて微笑み、静かに乾杯する。グラスに口をつけ、繊細な泡とともにシャンパンを味わう。口当たりはなめらかで、フルーティーな香りが鼻腔を通り抜けた。
やがてコースが始まり、クリスマスらしい豪華な料理の数々に舌鼓を打つ。
時折ワイングラスを傾けて窓の方を見ると、眼下には星をちりばめたような夜景が広がっている。それを、大好きな勇悟と一緒に楽しんでいるこの時間は、やっぱり幸せだ。
たとえ、気持ちが重なっていなくても――。
「それで……結論は出たのか? 今夜どうするか」
コース終盤、デザートプレートが運ばれてきた頃、勇悟がテーブルの向こうから静かに尋ねてきた。
私の気持ちはもう決まっている。けれど口にするには勇気がいるので、私はグラスに残っていたワインを呷って、勢いのままに告げる。
「決めた。今夜は、勇悟と一緒にいる」
「……本当に、いいのか?」
彼は少し目を伏せて何か考えてから、もう一度私をまっすぐに見つめ、確認する。
そう何度も確認されると恥ずかしくて、頬に熱が集中するのを感じながらも、こくんと頷いた。