天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~
兄の嘘に惑わされ――side勇悟

 ずっと欲しくて、けれど手を伸ばすことができなくて、あきらめていた恋。

 胸に閉じ込め、鍵まで掛けていたその想いを解放した甘いひと時、俺は間違いなく幸福だった。

 この先も、絢美のそばにいたい。人生を共に歩きたい。俺よりもずいぶん華奢で、壊れそうなほどやわらかな彼女の体を大切に抱きながら、俺は切に願った。

 行為の後、絢美は疲れて眠ってしまったが、俺はようやく彼女と結ばれた嬉しさと興奮で寝付けなかった。

 一旦シャワーを浴びることにして、ベッドから出る。絢美の体に布団をかけ直し、安らかな寝顔にキスをして、ベッドを離れたその時である。

「ごめんね……聡悟くん」

 彼女の口から、微かな声だがそんな言葉が聞こえた。

 寝言……? そうは思っても、途端に胸がざわめいた。

 思わずベッドに屈んで彼女の表情を確認すると、目を閉じてはいるものの、悪い夢でも見ているかのように苦しそうな顔をしていた。

 どうして聡悟に謝る? 双子の弟である俺と結ばれ、聡悟の気持ちには応えられないから?

 ……それとも。

 俺の脳裏に、遊園地で会った彼女の上司・柿田さんから言われた言葉が蘇る。

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