あなたの声が聞きたくて……
オフ会当日、私は、浮足立って家を出た。

みんなに会いたいと言って、わざわざ遠方から泊まりがけで来る子もいる。

明日は仕事だけど、終電までみんなと遊ぼう!


私が会場に着くと、小柄な女の子が話しかけてきた。

「こんにちは。もしかして、ゆめちゃん?」

ゆめちゃんは、今日来ることになってる別の女の子。

「いえ、St.(エスティ)です」

私が答えると、その子は、嬉しそうに悲鳴を上げた。

「キャー、St.ちゃん、会いたかったぁ! 私、ハル!」

普段から仲良くしてくれてるハルちゃん!

「えっ! ハルちゃん? うそ、嬉しい!」

私たちは、初対面にも関わらず、あっという間にみんなと打ち解けていく。

会場は、大人数が入れるカラオケ付きのレンタルルーム。

みんなでランチを食べ、自己紹介をし、あっという間に時間が過ぎていく。

「ねぇ、fair(フェア)くん、遅くない?」

ゆめちゃんが呟いた。

えっ?

「fairさん、今日来るの?」

聞いてない。

オンラインカラオケの中で、一番仲良しだと思ってたのに……

「うん。初めは、仕事で行けないって言ってたんだけど、途中参加でもいいかって連絡があったの」

ゆめちゃんは、この会場を予約してくれた幹事さんだから、ゆめちゃんのところに連絡したのかな?

途端に、私はそわそわし始める。

まさか、fairさんに会えると思ってなかった。

どうしよう。

あ、でも、待って。
声がいいからって、ルックスがいいとは限らない。

いや、ルックスなんてどうでもいいよね。

大切なのは、中身!

優しい人なのは、分かってるんだから。

会ったこともない人にこんな感情を抱くのは初めてで、自分でもどうしていいか分からない。


それから30分ほど経った時、ガチャリと重い防音扉のドアノブが回った。

そっと押し開かれたドアの陰から、背の高いひとかげが現れた。

えっ?
なんで?

彼を見た瞬間に、私は固まってしまった。

「あぁ! fairくん? fairくんだよね!?」

みんなが立ち上がって駆け寄る。

「はい。fairです。はじめまして」

そうにこやかに挨拶する彼の笑顔は、見慣れたものだった。

「fairくんのために、もう一回、自己紹介しよ!」

ハルちゃんが提案して、みんなが席に戻ってくる。

その場に立ち尽くしていた私を視界に捉えたfairさんは、その場に固まった。

「三島さん、なんで……」

「店長こそ……」

みんなは私たちを交互に見比べて首をかしげる。

「え、なに? St.ちゃんと、fairくん、知り合い?」

ゆめちゃんが尋ねた。

無言でうなずく私を見て、店長が笑みを浮かべた。

「同じ職場なんです。会いたい友人って、オフ会のことだったのか!」

店長は、スタスタとこちらへ向かって歩いてくると、当然のように私の隣に座った。

みんなも戻ってきて、わらわらとそれぞれ空いた席に座っていく。




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