『君』の代わり。

「おばあちゃん、柿ありがとう
みんな喜ぶと思う」



「いっぱい食べすぎると
体冷やすから、気を付けてね」



「うん
おじゃましましたー」



柿を持って

朝日奈を送った



オレたち

付き合ってるのかな?



オレも聞きたかった



「ねー、星野
冬休みに東京行きたいから
案内してよ」



「ホントに、行くの?」



「ホントに行くよ
そのために夏休みバイトしたし
今、行きたいところ調べてるんだけど
1日じゃ無理そうだから
1泊なら許してくれると思うんだよね…」



「1泊?」



「星野の家、泊めてくれる?」



「オレの?
ホントに言ってる?」



「うん、ホントに言ってるよ」



「んー、まぁ…親に聞いてみる」



「楽しみ!」



朝日奈

ホントに?



朝日奈が

東京に来る



しかも

オレの家に



しかも

1泊



「ねー、星野…」



「なに?」



「私たち、付き合ってるの?」



「あー、さっき、ごめん

ばあちゃんいたから…

オレは…
付き合いたいと、思ってる」



ダメかな…



「私は…
付き合ってる気でいた」



「え…」



「だって星野
この前、好きって言ってくれたじゃん
キスしてくれたじゃん

アレは、ただの遊びだったの?」



「そんなこと…」



「するわけないよね

星野は、そんなことする人じゃないもん
ちゃんと、大切にしてくれるって知ってるよ
だから、何されてもこわくないの」



星野は

こわいことしないから



朝日奈に言われた時

微妙な気持ちになった



見縊られてるのか

バカにされてるのか

信用されてるのか



「朝日奈の言う
こわくないって、なに?」



「星野は何があっても
私を裏切らないと思う

いつも助けてくれたし
この前だって置いてかなかった

ホントのこと、話してくれたし…

だから
星野とだったら
何があっても、こわくない

だから…」



「だから…?」



「たから…
星野が好きってこと!」



朝日奈がオレに抱きついてきた



「重いけど…」



オレは両手に柿が入った袋を持ってた



「星野の、彼女にしてください」



朝日奈は

オレの胸にそう言った



「はい…
オレの彼女に、なってください」



直立不動で

そう答えた



オレも

朝日奈を

抱きしめたいのに



両手の柿が邪魔だった



んー…



朝日奈がかわいすぎて

抱きしめる代わりに

屈んで

キスした



ーーー



月明かりで

朝日奈の照れた顔が見えた



ネオンも街灯もない

この町



オレには

いつも

朝日奈が

1番輝いて見えた



オレのシャツを掴んで

朝日奈が背伸びした



ーー

ーーー



軽く触れて

また触れた



軽い気持ちなんかじゃない

朝日奈も一緒だと思う



輪の中にいるみんなの中の

特別だと思う



「ねー、星野…」



「なに?」



「好きだよ」



「うん、オレも好きだよ」



「知ってる」



オレは

たぶん



この子を

ずっと



この子を

一生



大切にすると思う



朝日奈が柿の袋を1つ持って

手を繋いだ



何もないけど

この手があれば


オレは

ずっと


ここにいたい



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