『君』の代わり。
ーー
同じ目線の高さの
星野の唇に
短く触れた
目の前の星野は
そんなに驚いてなかった
あの時
私に告白してくれた時の星野も
冷静だった気がする
なんで私
今
星野に触れたくなったのかな?
考えたら
急にドキドキした
私から触れたのに
私の方が動揺した
付き合ってもないのに
キスするとか
ありえない
私にはやっぱり
無理かも
それじゃ
やっぱり
耀先輩に好きになってもらえない
考えてたら
ーーー
さっきより少しだけ長く
優しく
また触れた
今度はたぶん
星野から触れた
試すみたいに
軽く触れた
「朝日奈は、変わらないでね…」
私はドキドキしてるのに
星野は落ち着いてた
「ひどいな、星野…
私だって、かわいくなりたいし
もっとダイエットして
制服のスカート短くしたいもん!」
星野の声のトーンに反して
照れ隠しで明るく言った
「変わらないでほしい
…
ずっと…
オレがこの町で出会った朝日奈でいてほしい」
東京にいたら星野は
きっと私なんか
目にも止めなかったんだろうな
東京にいたら
その前に
私たち出会ってないね
「それって、私に死ね!って言ってる?
だってさっき星野言ったよね
生きてたら変わらないものないって…」
私は
確かに触れた唇が恥ずかしくて
どうしても冷静に喋れなかった
「うん、言ったよ
…
オレの気持ちは
あの時で、死んでる」
「あの時…って…?」
なんとなくわかったのに
聞いてしまった
「朝日奈を好きだって言った
あの時…」
「…」
聞いたクセに
何も言えなかった
星野に
言わせたクセに
「あの時から、オレの気持ち、変わってない
…
ずっとあのまま死んでる
…
…
まだ、朝比奈のことが、好きだよ
…
…
ごめん…」