『君』の代わり。

寝る時は

またベッドの横に布団を敷いた



なんだ

当たり前に一緒に寝ないんだ



さっき何も着なくても…とか言ってたくせに



前に来た時は

一緒にベッドで寝たよね



星野

機嫌悪い?



星野は黙ってベッドに寝て

私は星野が敷いた布団に寝た



寝たって言うか

寝れなくて

クーラーの音と

時計の音が

気になった



「ねー、星野…
寝た?

おばあちゃん、寂しくないかな?
今日、ひとりでご飯食べたかな…

今日は、おばあちゃんち何だったかな…
きゅうりとワカメの酢の物と
ナスの味噌炒めかな…

明日もおばあちゃんひとりだね…


ねー、星野…

一緒に寝たかった、星野と…」



「クーラー、寒かった?」



「んー…

え?星野、起きてるの?」



「うん、寝てなかった

朝日奈が急に話し始めたからビビった
寝言かと思ったけど違ったし…」



「なんだ…起きてたんだ」



起きてるなら

話してくれてもいいじゃん



「クーラー、寒かった?
だから一緒に寝たかった?」



「寒くないよ…」



「じゃー、なんで?
なんで、一緒に寝たいの?」



星野のイジワル!



「じゃー、寒かった!
星野と一緒に寝たい!」



「シー!
隣、兄ちゃんいるから…」



「あ…」



だからか…



なんだ

星野

別に機嫌悪くなかったのかな



「この前来た時は、一緒に寝たし…

ひとりじゃ、寂しい…

星野と一緒がいい…」



この前のことを思い出したら

ドキドキして

熱くなった



「シー!」



星野がベッドから私の布団に入って来た



クーラーの冷気と一緒に

星野の体温が

私の身体に交わった



「朝日奈、温かいじゃん
むしろ、熱くない?」



星野が私を抱きしめて言った



それは今

星野が抱きしめたから…



それに寒いっていうのは

嘘だし…



「星野が、好きだから…

星野が好きだから、一緒に寝たいし…

星野が好きだから、熱いの!」



「シー!」



ーーー



星野のキスが優しくて

なんか

安心した



「ごめん…
オレの気分で…
朝日奈、嫌な気持ちになったよね
朝日奈悪くないのに…」



「ん…星野も悪くないよ」



「なんかさ…
ここに帰って来ると
いろいろ考えてさ…

ごめん…
朝日奈とせっかく一緒にいれるのに…

もぉ、大丈夫だから…」



私が東京に来たいって言って

私だけ楽しんでた



星野は辛かったのに…



ごめんね



「ねー、星野…

おばあちゃん寂しいと悪いから
明日、帰ろう

明日は
星野が行きたいって言ってた所行って
それで帰ろうよ

おばあちゃん、きっと待ってるよ」



ホントは星野が辛そうだから

おばあちゃんのせいにした


ごめんね

おばあちゃん



「ばあちゃんは朝日奈の楽しい話を
楽しみに待ってるんだから
予定通りの2泊3日でいいよ

急に帰ったら心配するし
帰ったらまた
ふたりきり禁止だから…

もっと朝日奈とふたりでいたいし…」



星野がいいなら

いいけどね



「うん」



「もぉ嫌な気持ちにさせないから…」



「うん、おやすみ星野」



「おやすみ」



星野は私を

大切なぬいぐるみみたいに抱いて寝た



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