『君』の代わり。

次の日

星野が連れて行ってくれたところは



昼間なのに視界一面星空だった



プラネタリウムっていうんだって



星野が子供の頃

家族でよく来た場所らしい



ネオンが多くて夜空が明るい東京は

星が綺麗に見えなくて

星野はここが宇宙みたいで好きだったんだって



おばあちゃんちに遊びに行った時

夜空がプラネタリウムみたいで

すごく感動したんだって



あんな田舎に

東京にないものあるんだ



さっきまでいっぱい人がいたのに

照明がおちて暗くなったら

星野と私

ふたりしかいないみたいだった



「ばあちゃんちの星空の方が
ぜんぜん綺麗でしょ

でもなんか…
ここに朝日奈と来たかった」



ペアシートに座って

星野が私の耳元で言った



星野がいつも送ってくれる帰り道

星野はいつも空を見上げてた



私には

特別なものでも何でもなかったけど



星野はいつも

どんな気持ちで見てたのかな?



東京の空と繋がってるのにね

なんか不思議だね



「ねー、星野…」



「ん…?」



「連れて来てくれて、ありがと」



ーー



耳元にキスしたら



ーーー



耳元に返ってきた



くすぐったい



「星野…くすぐったいよ…」



「朝日奈が先にしてきたんじゃん」



ーーー



また耳元にキスした



「もぉ…星野…」



「シー!」



ーーーーー



今度は口を塞がれた



んー…

星野って

いつもズルい



また

好きになる



繋いでた手が

肩に回されて

抱きしめられた



「朝日奈…ありがと…」



星野の声が

少し震えた気がした



東京は

きっと星野にとって

孤独な場所なのかもしれない



こんなに人がいるのに

星野はきっと

いつもひとりで



おばあちゃんのところが

唯一星野の居場所だったのかもね



「ねー、星野…
大丈夫だよ

私がついてるから…
任せて…」



星野の胸に言った



「うん…」



「星野、大好きだよ」



「うん…」



ーーーーー



大好きは



またキスで返ってきた



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