『君』の代わり。
母親が持ってきたバナナのお菓子を
部活に持って行った
「うめー!」
「オレ、もぉ1個食べたい!」
「オレのぶんもある?」
「シー!先生に見つかったら部活停止」
「大会前なのに先輩にめっちゃ怒られる」
部活が終わってから
学校の階段の下で隠れて食べた
「ねー、なんか甘い匂いしない?」
階段の上から女子の声が聞こえた
「えー、ホントだ」
「香水?」
「違う…誰かお菓子食べてる?」
「ヤベー…」
「シー!」
「誰?」
「ゴミ隠せ!」
「「あーーー!!!みつけた!!!」」
見つかった
「サッカー部、お菓子食べてる!」
「あー、いいのかな!」
朝日奈たちだった
「「「「「シーーー!!!」」」」」
「じゃあ、うちらにもちょーだいよ!」
「絶対、先生に言うなよ!」
「サッカー部、部活停止になったら大変だから」
「じゃあ、2個ちょーだい」
「私もー!」
「そんなねーよ」
「お前ら食意地はってる!」
「デブるぞ!」
「じゃあ…」
「先生ーーー!!!」
「あー、オレのやるわ」
「オレのもよかったら…」
「いっぱい食べても0カロリーだから大丈夫!」
「「ヤッターー!!!」」
オレは黙って
みんなの輪の中で見てた
朝日奈を
「アレ?コレ、私、食べたことある」
「ホントだ!美味しいよね!コレ」
よかった
朝日奈が喜んでくれた
よかった
朝日奈が笑ってる
「東京のお土産?
星野、東京帰ってたの?」
朝日奈がオレを見た
「あ、うん…ちょっとね」
「なんだ…
それで部活出てなかったんだ」
「うん…」
朝日奈
オレのこと気にしてた?
「この前、私が手振ったのに
星野、無視したよね?」
「無視…?
あー、あの時?
別にオレに振ってないかな…って…」
「星野にも振ってたよ
無視されたと思ってショックだった
だから、バナナもぉ1個ちょーだい!」
「え、もぉないよ…ごめん…」
「じゃあ、また東京行ったら買って来てね!」
「うん…」
もぉ帰らないかもしれない
もぉ帰りたくない
朝日奈の変わらない笑顔を見て
思った
ずっと
朝日奈の近くにいたい
付き合ったり
彼女じゃなくてもいい
みんなの輪の中で
朝日奈を見てるだけでいい