『君』の代わり。
前に朝日奈の手を掴んで
走った道を
ふたりで歩いた
「ホントに歩くの?
朝日奈、途中でバテるだろ」
「大丈夫
前も星野と帰ったから…
星野となら歩けるはず!」
「あの時は、走ったけどね
途中でバテたら置いてくからな」
「じゃー、今日も走る?」
そう言って朝日奈は
走り出した
「マジ…?」
朝日奈を追いかけた
遅くて
すぐに追い付いて
追い越した
「星野、速いー!待ってよ!」
笑いながらついて来る
朝日奈を
振り返りながら
かわいいな…って思った
彼女だったらな…
彼女だったら
ばあちゃん
喜ぶだろうな…
彼女だったら
今すぐ手を伸ばして
手を引いて
どこまでも一緒に走りたい
「星野ー!待ってよ!
疲れた…休憩…」
朝日奈がしゃがんだところまで
少し戻った
「休憩、早すぎ!
この調子だと、無理そうじゃね?
次の駅から、電車乗る?」
「あの時は…
星野が手を引いてくれたから
がんばれた」
あの時は
必死だったから…
先輩から
朝日奈を助けるために
朝日奈がしゃがんだまま
オレに手を伸ばした
その手を
オレは
掴んではいけないと思った
「やっぱ、電車乗ろう」
「じゃー、歩く」
朝日奈は立ち上がって
ひとりで歩き始めた
また朝日奈を追いかけて
歩いた
朝日奈は
真っ直ぐ
何も言わずに歩いた
また
怒った?
「今日もばあちゃんのご飯食べるだろ?」
後ろから
朝日奈に
声を掛けた
「今日は食べない」
「なんで?」
「…」
「怒った?」
「怒ってない」
じゃー、なに?