押入れから王子が出てきましたよ?
 紬は持ってきていた袋の中からカラフルなフェルト生地を取り出す。

 途中まで作っていた胴体も出てきたので、
「じゃあ、これを縫い合わせましょうか」

 将軍、と外に向かって、どれが将軍だかわからないが呼びかける。

 偉い人が首だけでは格好つかないかな、と思ったからだ。

 ははっ、となぜか改まった様子で、転がってきた首が言う。

 髪はついていたようだ。

 ただ、結い上げていないので、ザンバラになっていて、まるで落ち武者だが。

「こっち来てください。
 引っ付けます」
と刺繍糸をつけた針を見せると、将軍は息を呑んだ。

 ……ように見えた。

 口許は王子と一緒でずっと笑っているのだが。

「……麻酔は」
と将軍に訊かれ、

「いや、ないですよね」
と答える。

 そもそもフェルト生地に麻酔をしたところで、染み込むだけだと思うが。
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