押入れから王子が出てきましたよ?
「王子が街を歩くとメス犬も失神して倒れると言われるくらいです」

「あの……人間の女子は倒れないんですか?」

 犬にだけモテるんじゃあるまいな、とミニチュアサイズでしか見ていないので、どうも、王子 イコール マスコットかペット、の発想から離れられずに紬は思う。

 双眼鏡で戦闘を覗いた。

 向こうの騎馬隊が草を踏み荒らしながら駆けてくるのを見ながら訊く。

「あれは、馬の霊でも入ってるんですか?」

「いいえ、人間です」

 戦闘に参加できるのは、人間の魂のみ。
 そういう決まりですから、と将軍は言う。

「……大変ですね。
 ところで、向こうの人形は陶器のようですが」

 馬はプラスチックのようだが、人形は陶器で出来ているようだ。

 鎧を着て、槍を振り上げている。
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