押入れから王子が出てきましたよ?
 首や腕がとれかかっている人形たちに向かい、格好いい敵の兵士たちが叫んでいた。

「よくそんな体勢で動けるなっ」

「ははははは。
 最初からこの状態で訓練しておるからなっ」

「なるほど。
 我々が、高地で心肺を鍛えていたのと同じに、バランス感覚を鍛えていたわけだな」

 いや、君ら、鍛える心肺ないようなんだけど……。

「うぬっ。
 先へ先へと戦術を読んで、人形を作成してくるとは!

 なんと言う恐ろしい人形師だっ」

 中には刺されたものも居たようだが、引き抜かれて倒れないのなら、勝敗には関係ないようだった。

「おお、刺されてもなんともない!」
と刺された兵士が叫ぶ。

 双眼鏡で覗きながら、紬は言った。

「フェルトですからねー。

 というか
 敵側は何故、陶器を選んだんでしょうね。

 格好いいけど、一撃じゃないですか」

 こちらが放った石つぶてにやられ、陶器の人形は割れたり、ヒビが入ったりしていた。



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