押入れから王子が出てきましたよ?
「こんなに快勝したのは初めてです。
 紬様は、まるで女神様だ」

「おお、そうだなっ、女神様だ!」

「……女神様、大きすぎないか?」

「いや、女神様なんだから、あれくらいでいいであろう」

 いや、貴方がたも本当は大きいんでしょうが……。

 長くフェルト人形の中に入っているので、感覚が狂っているようだった。

 みなが喜び勇んでいる中、紬は横に立つ王子を見た。

「お疲れさまでした」
と改めて言う。

 ……うむ、と言う王子は何故か少し恥ずかしそうに見えた。

「王子、私、今日、学びましたよ。
 敵方は格好よかったけど。

 石つぶてごときで一撃でしたね。
 人間もきっと、見た目が重要ではないんだろうな、と思いました」

「……お前、何故、私を見て言う。
 私の本体はな、お前より大きくて、イケメンだぞと言っておるであろうがっ」
とまたぴょんぴょん飛び跳ねている。

 はいはい、と言いながら、紬は、ひょいと王子をつまみ、肩に乗せた。

「この方が話しやすいです」
と笑うと、王子は赤くなった。

 ……ように見えた。

 元から頬紅が塗ってあるのでよくわからないが……。
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