押入れから王子が出てきましたよ?
 

 一回目の対戦が終わったあと、みんなで祝杯を上げたりしたので、帰ってくるのが遅くなり、更に睡眠時間を削られた紬だったが。

 みんなの嬉しそうな顔……いや、全部同じ顔なんだが……を思い出しながら、昼休みもひとり教室で、チクチク、人形の胴体を作っていた。

 すると、誰かが上から覗き込み、言ってくる。

「へー、一ノ瀬。
 そんなことしたりするんだ?

 やりそうにないのになあ」

 ……誰だ。

 微妙に毒をかましてくるのは、と思って、チラと顔を上げると、同じクラスの沢良木春馬(さわらぎ はるま)だった。

「いや、ちょっと予備のボディを」
と思わず言ってしまい、

「予備のボディ?」
と訊き返される。
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