押入れから王子が出てきましたよ?



 眠っているとき、誰かがそっと自分の髪を撫でた気がした。

 やさしい手……

 のような気がしたのだが。

 さわさわという梢の揺れる音を聞きながら、紬は目を覚ました。

 やはり、王子がちょこんと足に寄りかかるようにして座っている。

「王子……付いててくれたんですか?」

 だが、返事がない。

「王子? 王子?

 ……死にました?」

 本体に帰ったのだろうかという意味で言ったのだが、すぐに人形は、
「殺すな、莫迦者。
 ちょっと眠っておったのだ」
と言ってくる。
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