押入れから王子が出てきましたよ?
「お前が気持ち良さそうに寝ているからつられた」

「そうですか。
 目を開けてらっしゃるので、わかりませんでした」

「……お前が目を開閉式に作らぬからだ」

「あ、そうだ、王子。
 さっき、私の髪を撫でてくれました?」

 うむ、と王子は頷いた。

「風にあおられて、頬にかかり、鬱陶しそうだったので払ったのだ」

 紬が少し笑い、
「一瞬、普通の男の人に触られた気がしました」
と言うと、

「莫迦め。
 私は普通の男の人だ」
と言う。

 いやー、でも、ずっとその姿しか見てないですからねー、と思いながら、
「……付いててくださってありがとうございます」
と改めて礼を言った。

 いや、まあ、寝不足なの、この人のせいなんだが……。

 でもまあ、頼まれると断りきれないよな、可愛いから、と思いながら、微笑み見つめていると、王子は何故か照れたように、もじもじし始めた。

 ……いや、左右に揺れているだけなんだが、そんな感じだ。
< 30 / 47 >

この作品をシェア

pagetop