押入れから王子が出てきましたよ?
 なんか可愛いな。

 ひょいっと手のひらに載せると、目許まで人形を持ち上げ、じっと見つめる。

 すると、王子はいきなり、
「おのれっ。
 私を悩殺する気かっ!」
と叫び出した。

 紬の視線から逃げるように後退した王子は、手のひらから落ちかける。

「あっ、王子っ」

 紬は、落下しかけた王子をつまんで止めた。

「……くっ。
 こんなことで紬に助けられるとはっ。

 早くすべての戦に勝利し、この人形から出なければっ」

「いや、可愛いから、そのままでいいですよ」

「この私をマスコット扱いか!
 庶民めっ!」
という、よくわからない捨て台詞を残し、王子はいなくなった。

 ……なんなんだ、と思っていると、王子が走って行った近くのテントから、今の会話を聞いていたらしい将軍の呑気な声が聞こえてきた。

「その格好じゃ仕方ないんじゃないですかねー?」
と。



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