押入れから王子が出てきましたよ?
「王子、肩に乗せてもいいですか」

「なんでだ……」

 いや、可愛いからですよ、と思っていると、
「お前は戦場には出せないからな。
 人間のままだし、危ないし。

 兵士たちの身体も出来た。
 修繕以外の用はないから、私のテントで休んでおれ」
と言ってくれる。

 はあ、どうもありがとうございます、と言いながらも、やっぱり、気になるので、その日も将軍と戦闘を見ていた。

 この日の相手軍は何故か招き猫の軍団だった。

「ふふふ。
 お前たちがあちらの世界から優れた人形を持ち帰ったというので、我々も手に入れてきたっ。

 幸運を招くというお猫様の人形だっ」

「そうなのですか?」
と将軍が訊いてくる。

「右手で招いていると、金運。
 左手だと人。

 この猫たちは左手なので……

 ああ、敵を招いてますね……」

 左手が可動式になっているようなのだが、所詮は陶器。

 この間の人形のように瞬時に撃破されていた。

 いや、前の戦闘見てなかったんですか……? と左手で招きながら、突進してくる猫たちを紬は見た。





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