押入れから王子が出てきましたよ?
「もう無理だ。
 私の身体はこの人形に入って出られなくなっている。

 余程、相性がいいのであろうな。

 まあ……事故に遭わない人形なら、流れ弾にも当たらぬやもしれぬな」
と言ってくる。

 いや、だから事故に遭わない人形は、おばあちゃんの人形で、それは私が中学のとき、学園祭で提出するために突貫工事で作ったやつなんですが。

「ともかく、お前、ついて来い」
「は?」

 首の曲がったお内裏様は振り返り、
「この状態では戦えぬ」
と押入れを見た。

「見ろ。
 他の連中はあの状態だ」

 半分開いた押入れから、大量の人形の首がゴロゴロ、生首状態で転がってきた。

 自分が作ったものなのに、ひーっ、と思い、思わず、お内裏様の陰に隠れようとしたが、隠れられなかった。

 小さすぎたからだ。

 だが、何者なのかわからないがこのお内裏様。

 とてつもなく偉そうだ、と思っていると、

「なぜ、あれは生首だけなのだ、職人」
とお内裏様が訊いてきた。

「いや、あれ、雛人形七段飾りを作るつもりだったんですよね」
と紬は呟く。
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